2021-01-01から1年間の記事一覧
第8節 ルカが甲板に出ると、懐かしい曲が耳に入って来た。 穏やかな曲だが、何処か郷愁を感じさせる。 「(違う世界の曲なのに心に響く感覚は変わらないんだな――。)」 音楽が聴こえて来る方へ進むと、奏者は船尾に繋がる階段に腰を下ろしていた。肩には鳩を…
第8節 ルカが甲板に出ると、懐かしい曲が耳に入って来た。 穏やかな曲だが、何処か郷愁を感じさせる。 「(違う世界の曲なのに心に響く感覚は変わらないんだな――。)」 音楽が聴こえて来る方へ進むと、奏者は船尾に繋がる階段に腰を下ろしていた。肩には鳩を…
第6節 「シャルロッテ・ゲッペウスは陛下に何と言ったのだろう?」 ブリットの話を聞き、デュルゼルは呟いた。 「すみません…。口元を手で隠され、読唇も出来ませんでした。」 申し訳なさそうに言うブリットに、デュルゼルは慌てて自分の意図を弁明する。 …
第6節 「ローベルト・ゲッペウスは陛下に何と言ったのだろう?」 ブリットの話を聞き、デュルゼルは呟いた。 「すみません…。口元を手で隠され、読唇も出来ませんでした。」 申し訳なさそうに言うブリットに、デュルゼルは慌てて自分の意図を弁明する。 「…
やがて―― 「相分かった。シャルロッテ・ゲッペウス、楽にせよ。」 フォルティア国王ルドルフの声が厳かに響き渡った。 その言葉にブリットは剣を収め、息を整える。女は立ち上がり、先程自分が杖を置いた場所に戻った。 「…他に何かあるか?」 女が杖を拾い…
やがて―― 「相分かった。ローベルト・ゲッペウス、楽にせよ。」 フォルティア国王ルドルフの声が厳かに響き渡った。 その言葉にブリットは剣を収め、息を整える。男は立ち上がり、先程自分が杖を置いた場所に戻った。 「…他に何かあるか?」 男が杖を拾い上…
第5節 「近くに落ちましたね。」 静寂は女の声で破られた。同時にブリットは我に返る。「びっくりしましたね」女は彼に同意を求めるように笑い掛けると、またルドルフ王に視線を戻した。 「私は、シャルロッテ・ゲッペウスと申します。旅の魔術士でございま…
第5節 「随分と近くに落ちましたね。」 静寂は男の声で破られた。同時にブリットは我に返る。「いやはや、驚きました。」男は彼に同意を求めるように笑い掛けると、再びルドルフ王に視線を戻した。 「私は、ローベルト・ゲッペウス。旅の魔術士でございます…
第4節 「――そうか。そのような事が…。」 場面はルード城の謁見室に戻る。 「大義であった。」 王の言葉にデュルゼルは頭を下げた。 「今一度、オルドス側に確認を取るしかないか…。」 ドルフェス港の大型船の件も含め、オルドスに確認中ではあるが、問い合…
第4節 「――そうか。そのような事が…。」 場面はルード城の謁見室に戻る。 「大義であった。」 王の言葉にデュルゼルは頭を下げた。 「今一度、オルドス側に確認を取るしかないか…。」 ドルフェス港の大型船の件も含め、オルドスに確認中ではあるが、問い合…
「せっかくの鍛錬中にお邪魔してしまい、申し訳ございませんでした。お時間を頂けた事に感謝致します。」 ウーナは2人に丁寧に礼を述べた。 「もう良いのかい?積もる話しもあるだろうから、茶でも飲んでゆっくりしてけよ。俺もゲルドさんの話しもっと聞き…
「せっかくの鍛錬中にお邪魔してしまい、申し訳ございませんでした。お時間を頂けた事に感謝致します。」 ウーナは2人に丁寧に礼を述べた。 「もう良いのかい?積もる話しもあるだろうから、茶でも飲んでゆっくりしてけよ。俺もゲルドさんの話しもっと聞き…
「貴女に、伺いたい事がある。」 祈りを終えたウーナにデュルゼルは声を掛けた。 「ラウアールの波の消滅方法――オルドスは、どこまで把握していたのだ?」 「…。」 ウーナ一行が異界へと派遣された961年、その時点でオルドスはほぼ全てを把握していた。 ラウ…
「貴女に、伺いたい事がある。」 祈りを終えたウーナにデュルゼルは声を掛けた。 「ラウアールの波の消滅方法――オルドスは、どこまで把握していたのだ?」 「…。」 ウーナ一行が異界へと派遣された961年、その時点でオルドスはほぼ全てを把握していた。 ラウ…
3人が声の方を振り返ると、いつの間にか春の花々を持った神官親子が樹々の合間に立ち、こちらを見ていた。シャルロッテはばつが悪そうに、お辞儀をすると、ゲルドの墓の前から忽然と姿を消した。――が、次の瞬間には少し離れた木の下にその姿を表した。 それ…
3人が声の方を振り返ると、いつの間にか春の花々を持った神官親子が樹々の合間に立ち、こちらを見ていた。ローベルトはばつが悪そうに、お辞儀をすると、ゲルドの墓の前から忽然と姿を消した。――が、次の瞬間には少し離れた木の下にその姿を表した。 それと…
デュルゼルとローディは3人をゲルドの墓に案内し、あの時あの2人に聞かせた白き魔女の物語を事件の真相や顛末等必要な補足を付け加え語った。3人は黙って聞いており、ローディもその傍らで腕を組み、耳を傾けていた。デュルゼルと白き魔女の関係はある程…
デュルゼルとローディは3人をゲルドの墓に案内し、あの時あの2人に聞かせた白き魔女の物語を事件の真相や顛末等必要な補足を付け加え語った。3人は黙って聞いており、ローディもその傍らで腕を組み、耳を傾けていた。デュルゼルと白き魔女の関係はある程…
第3節 「宮廷剣士デュルゼル様ですね?」 振り返ると紺色のローブを身に纏った女が立っていた。格好からして魔法の使い手だろう。ダークブラウンの髪を後ろでまとめ、琥珀色の目をした美しい女だった。 「こちらにおられると、国王陛下より伺いましてね。……
第3節 「宮廷剣士デュルゼル様ですね?」 振り返ると紺色のローブを身に纏った男が立っていた。格好からして魔法の使い手だろう。少し癖のあるダークブラウンの髪を後ろで結んだ、琥珀色の目をした整った顔立ちの優男だった。 「こちらにおられると、国王陛…
第2節 春の嵐は赤子の産声だ。前世でもう生まれまいと、あれ程誓ったにもかかわらず、また人の子として生まれてしまった事を後悔し、新たな贖罪を背負ってしまう事を嘆く、人間の産声だ。 ラウアールの波から3カ月、世界は何事もなかったかのように動いて…
第2節 春の嵐は赤子の産声だ。前世でもう生まれまいと、あれ程誓ったにもかかわらず、また人の子として生まれてしまった事を後悔し、新たな贖罪を背負ってしまう事を嘆く、人間の産声だ。 ラウアールの波から3カ月、世界は何事もなかったかのように動いて…
数あるブログの中からご覧頂きありがとうございます。 この倉庫は、アメンボが書いたガガーブトリロジーの二次小説『春告の求道者』を主に置いております。 『春告 (はるつげ) の求道者 (きゅうどうしゃ) 』について □この作品はガガーブトリロジーの2次創…
ガガーブ暦993年春、ある時化の日ーー。ドルフェスの港に一隻の大型船が停泊した。 その船の停泊期間と重なるように、奇妙な女が英雄デュルゼルの元を訪れる。 女は、シャルロッテ・"ゲッペウス"と名乗った。
ガガーブ暦993年春、ある時化 (しけ) の日ーー。ドルフェスの港に一隻の大型船が停泊した。 その船の停泊期間と重なるように、奇妙な男が英雄デュルゼルの元を訪れる。 男は、ローベルト・"ゲッペウス"と名乗った。