アメンボの倉庫

!ご注意!オリ主の登場する二次創作の小説等を置いています。

第1章⑮_ver.男性主人公

第13節

「先程は大変失礼しました。私はローベルト。カンドも多少は使えますが、専門はチャッペルの魔法使いです。ラップ先生には10代の頃より大変お世話になっておりまして…。」
落ち着きを取り戻した男はログにそう名乗った。
「村の名前の書かれてる標識を見て、もうすぐ先生に逢える!と思ったら、テンションが上がってしまい、…攻撃強化魔法解くの忘れてました。」
「うっかりさんじゃのう!」
「…。(わざとじゃないよね…?)」
少し不安を感じたログは、ラップにそっと耳打ちをした。
「なぁ、おじい。この人、本当に大丈夫?俺、一緒に付いてようか?」
ログの言葉にラップはきょとんとした顔を彼に向けた。そして、
「…そう言えばお前、何でここにいるんじゃ?」と、青年に尋ねた。
「ん、資材を取りに行く途中だったんだけど、別に明日でも良いし…。」
「その資材は、先日村長から頼まれておった例の仕事で使う物じゃろ?明日で間に合うのか?」
間に合わない。また徹夜作業になる。
「けど、俺、徹夜で作業するの慣れてるし…。」
「ならん。村の大工はお前1人なんじゃから、もっと自分の身体を労ってもらわんとな。それに、若い頃無理をするとガタが来るのも早いぞ?」
「……。」
まだ渋い顔の青年を見て、ラップは微笑んだ。
「何じゃ?心配してくれているのか?なぁに、コイツ程度の魔法使いなんぞ、ワシにかかれば赤子同然!子ダヌキの爪切りに比べれば楽勝じゃ!」
「…さっき川を渡りかけてたよね?」
ログの言葉を聞いた男が2人の会話に割り込んで来た。
「おや、川に入られたのですか?
 なるほど通りでお召し物が濡れている筈だ。ハハ!随分子供じみた事をなさる!」と、ラップのシャツを見ながら言った。
「これはお前の涙と鼻水と涎じゃ。
 …まぁ、それはさておき――、 30年振りじゃのう、ローベルト。変わりないか?」
「はい!ラップ先生も、お元気そうで何よりです!…あ、これお土産の、バラカの豪商に雇われてる用心棒達の宿舎で使われていた布団たたきです。お使いください!」
「何でそんなもん持っとるんじゃ?」
「ええ。話は長くなるのですが、ギドネル滞在中、謎の爆破事故に巻き込まれまして、近くにいた俺が爆弾魔と疑われてしまい、商人達のまとめ役とかぬかす豪商の屋敷に連行されたのです。色々あって釈放されたのですが、あの町の連中ときたら礼儀知らずのクソガキ共ばっかだったので腹いせにこれをかっぱらって来ました。」
「相変わらず器が小さいのう…。」
そして犯罪だ。自分を置いて目の前できゃっきゃっとはしゃぐジジイとおっさん――。ログはチベットスナギツネになった。
「……。」
 ガガーブ歴993年、りんごの花が咲くある春の日――。
 伝説の大魔導師と妖術使いの数十年振りの再開の場に、奇しくも居合わせた事実を、この青年は知らない。


第1章『再会』・完